『町かどのジム』
1958年作品
エリノア・ファージョン著
松岡享子訳
童話館出版
ジムは町かどのポストの側にあるみかん箱にじっと座って孤独な毎日を過ごしている元船乗りです。年齢は80歳。そのジムと8歳の少年デリーは仲良しです。デリーはいつもジムから船乗り時代の愉快な話を聞かせてもらっています。それは明らかにほら話なのですが、子どものジムにとっては奇想天外で、わくわくするような冒険の世界に連れて行ってくれるものでした。だから、デリーはジムのことが大好きなのです。
老人と子どもは天国からの距離が同じくらいであるために相性が良いそうです。ジムとでリーはその典型で、二人は年齢差を超えた友情で強く結ばれています。作者のファージョンは子どもが好きでたまらなかったのでしょう。作品を通じて見えてくる子どもへのまなざしが愛情に満ちています。そのために、大人にとっても慈愛に満ちた読み物に感じられるのです。
また、この心温まるファンタジーにはエドワード・アーディゾーニの挿絵がつけられていることを明記せねばなりません。ファージョンの作品にはアーディゾーニの絵がよく似合います。これ以外の組み合わせは考えられないと思います。
160本文は160ページほどです。そこに10の短編が掲載されているわけですから、小学2年生から読めるようになります。小3なら十分でしょう。また、大人にも是非読んでもらいたい本であります。
(2015年3月19日)