神秘の島

『神秘の島』(第一部・第二部・第三部)

ジュール・ヴェルヌ著
大友徳明訳
偕成社 偕成社文庫

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ジュール・ヴェルヌはその生涯に80もの作品を残しました。この『神秘の島』はデフォーの『ロビンソン・クルーソー』や自作の『二年間の休暇』と同じ系譜に並ぶ無人島漂流記です。

アメリカの南北戦争時に、南軍に囚われていた5人の男達が気球で脱出するものの、強力なハリケーンによって南半球にまで飛ばされ、無人島に漂着します。5人のリーダーは技師サイラス・スミス。彼は科学技術の知識・技能があるため、男達は徒手空拳で無人島に着いたにもかかわらず、どんどん文明的な生活を実現していきます。5人の中で最年少15歳の少年ですら、博物学に精通しているときています。彼らは火を作り、陶器を作り、やがては鉄を作ります。果てはダイナマイトや銃まで製造します。この作品は科学技術が大きく発展した時代の産物ですから、人間はその力によって世界を支配できるという考えがヴェルヌにあったのでしょう。

この作品はヴェルヌの傑作『海底二万海里』の続編的な意味合いも持ちます。『海底二万海里』のネモ船長の出自、生涯、そして死がこの作品の中で語られています。『海底二万海里』を読んでからの方がこの作品をより楽しめるでしょう。

偕成社文庫では3分冊となっています。十分長大な作品ですが、子どもが読めば科学の力が人間にとってどれだけの恩恵をもたらすかよく分かるでしょう。漢字には読み仮名が数多く振られていますが、その意味の理解までは少し難しいと思われますので小学6年生以上に薦めてみましょう。

(2015年3月13日)