『くちぶえ番長』
2006年作品
重松清著
新潮社 新潮文庫
重松清の傑作にして重松清作品の入口として最適な本。主人公は小学4年生の男女です。当然小4の男女にうってつけです。
くちぶえ番長とは、主人公ツヨシの小学校にやってきた転校生です。名前はマコト。女の子です。小学4年生ともなれば学校での人間関係は複雑ですし、自分の立ち位置はどこなのかと考えて生きています。そして、その頃からいじめが始まるのです。
マコトは転校のあいさつの中で「わたしの夢は、この学校の番長になることです」と宣言し、「弱い者いじめを見過ごして逃げるような子は、大っきらいです!」と言ってのけます。実は、ツヨシは弱い者いじめを見て見ぬふりをして逃げていたのでした。ツヨシはマコトの言葉に衝撃を受けます。
マコトは言葉だけ勇ましい子ではありませんでした。悪いやつらをバンバンやっつけます。その登場の仕方が最高にかっこいい。一輪車をビュンビュン飛ばしてやってくる。それを自由自在に乗り回し、手にしているパチンコでいじめっ子を撃退します。パチンコは百発百中! 全く痛快であります。マコトの姿を見ているうちにツヨシも気持ちが変わってきます。
いじめとどのように向き合うのか。どうすれば心が強くなれるのか。そんなことをこの本は教えてくれます。重松清には重すぎる作品もあるのですが、この作品はいじめとの戦いを扱いながら暗さや陰湿さをあまり感じさせません。見事な作品です。
(2015年2月26日)