びりっかすの神さま

『びりっかすの神さま』

1988年作品
岡田淳著
偕成社

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二分間の冒険』と並んで子どもの読書への入口となりうる本に、やはり岡田淳の『びりっかすの神さま』があります。この本は活字も大きく組まれており、ページ数も約160と実に手頃です。そして何よりも物語に力があります。小学校のテストでびりっかすになるとびりっかすの神さまを見ることができることを知った小学生達はこぞって最下位を取ろうとします。その理由を知るよしもない担任の先生は周章狼狽するばかりです。しかし、びりっかすの神さまを見ることができるからといって、全員が最下位を目指すというのはいかがなものでしょうか。びりっかすの神さまはそれを喜ぶのでしょうか。・・・というのがこの物語の筋です。

岡田淳の本の魅力は物語が面白いだけでなく、何かしら重要な主題・メッセージが込められていることです。『びりっかすの神さま』でも、本当に大事なのはベストを尽くすことだと教えてくれます。そして、小学生達がベストを尽くすことの楽しさを覚えるとびりっかすの神さまは消えてしまうのです。

『びりっかすの神さま』は小学3年生から読めます。ただし、誤解のないように書いておきますが、小学3年生から読める本だからといって、その上級生が必ずしも主題を正確に読み取れるわけではありません。中学1年生でもこの主題を読み取れなかった生徒はいます。小学3年生からというのはあくまでも一つの目安なのです。同じ学年の生徒が全員同じ読書力であるわけはないのですから、選書はその生徒の読書力に応じて行わなければならないのです。ですから、小学3年生といわず、高学年の生徒にもぜひこの作品を読んで読書の楽しさを味わってほしいものです。

(2015年2月22日)