『フラッシュ』
2005年作品
カール・ハイアセン著
千葉茂樹訳
理論社
『フラッシュ』はアメリカのフロリダ発ヤングアダルト作品です。本の作りは大変ポップで、背表紙は黄緑色の背景に青い文字でタイトルが書かれています。本棚に置くと、少し遠くからでも目に入るので、思わず手に取ってしまいます。パッケージの企画としてはまことに秀逸といえます。姉妹作『ホー HOOT』も同様の造本です。
ここでいう「フラッシュ」とは英語で「FLUSH」と書きます。「FLASH」ではありません。「FLUSH」とは例えばトイレの水をジャーッと流す時の音を指しています。奇妙なタイトルなのですが、これは内容に関連しています。フロリダの海上に浮かぶカジノ船は、乗客の糞尿を浄化処理をしないまま海に垂れ流しています。その結果、子どもたちが泳ぐ浜辺は、あろうことかその糞尿にまみれてしまうのです。あまり想像したくない光景ですね。主人公の少年の父は、環境問題になるとたちまち頭に血が上ります。環境が破壊されるのを黙っていられないので即実力行使に出ます。その結果留置場送りになるのですが、その子も親の血をしっかり受け継いでいました。そして彼は環境も守るべく秘計を練るのであります。・・・というのがあらすじであります。
ヤングアダルト向けの本の多くは娯楽要素が強くて漫画的展開のものが多いのですが、読み物としては非常によくできています。小5以上なら楽しめるでしょう。また、中学生くらいで、今まで読書をしてこなかった生徒の読書の入口として最適ですし、生真面目すぎる作品、深刻な作品を敬遠しがちな生徒にも安心して薦められます。
(2015年2月24日)