ニルスのふしぎな旅

『ニルスのふしぎな旅』(上・下)

1906-07年作品
セルマ・ラーゲルレーヴ著
菱木晃子訳
福音館書店 福音館古典童話シリーズ

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上巻・下巻ともに500ページを超える大作です。

ストーリーは、14歳の少年ニルスがスウェーデンを南から北に旅し、また故郷に戻ってくるという物語の王道を守りながら、数々のエピソードによって彩られています。波瀾万丈の冒険はいわゆるファンタジー的ですが、神話的な物語も多数含み、感動的でもあります。子ども向けのファンタジーとして扱うにはもったいなさ過ぎる傑作です。

ラーゲルレーヴはスウェーデンの人で、スウェーデンの国土を心から愛していたのでしょう、この本を読み進めていくと、スウェーデンの美しさ、豊かさに目を見張ることになります。このような本が日本に見当たらないのは残念で仕方がありません。

福音館古典童話シリーズは造本がしっかりしており、活字も読みやすいのが特長です。しかし、大人が手にしてもずっしりと重いです。電車の中で読むのは厳しいかもしれません。偕成社文庫版は全4巻にしてありますから、持ち運び用にはそちらが良いかもしれません。ただし、大人であれば福音館版を愛蔵してしまいたくなるのではないでしょうか。

子どもが読む場合、読もうと思えば小3から読めるかもしれません。ただし、この物語の深さを味わえるとは思えませんし、長大さに辟易とし、途中で挫折する可能性が高いです。もしお子様に読んでもらうとすれば、小5の後半からが良いでしょう。その場合も、いきなり読破することを期待せず、本人が食いつくのをゆっくり待ってあげるのが良いでしょう。もし読破できれば大変な自信がつくと同時に、この物語の世界を堪能できたはずです。また、途中で投げ出しても、そこまでの旅を楽しめたのであればそれで十分です。

(2015年2月16日)