アルフはひとりぼっち

『アルフはひとりぼっち』

コーラ・アネット:文
スティーブン・ケロッグ:絵
掛川恭子:訳
童話館出版

aruhuha

農場で飼われているロバのアルフには悩みがありました。人間のおじいさん、おばあさんの農場で毎日一所懸命働いているのに、自分のことを気にかけてくれる人が誰もいないからです。ところが、一緒にいるイヌ、ネコ、カナリヤは何にもしていないのに、おじいさん、おばあさんの愛情を一身に受けているのです。自分にも愛情を分けてほしいアルフはおじいさん、おばあさんにアピールしますが、全く分かってもらえません。世を儚んだアルフは家出を決心します。しかし、自分がいなくなった後どうなるかを知りたいとも思います。そこで彼は家の屋根に登るのです。さあ、アルフがいなくなったと知った農場の人たちはどうするでしょうか?

アルフには本当に愛が注がれていなかったのでしょうか? また、一緒にいた動物たちは何もしていないのにおじいさん、おばあさんに認めてもらっていたのでしょうか? そんなことはありませんね。おじいさん、おばあさんはアルフがいなくなったら泣いて悲しむに違いありません。また、他の動物たちだって。

アルフは自分を誰からも愛されないひとりぼっちのロバだと思い込みますが、最後には自分がひとりではなく、周りから愛され、認められているという自己肯定感を持ちます。その自己肯定感を得るまでの物語が『アルフはひとりぼっち』です。

アルフたちの関係を親子関係と捉えることもできますし、教師と生徒の人間関係とも、また、職場などの人間関係とも捉えることができます。この作品は動物を主人公にすることで奥行きのある物語になっています。

対象年齢は小学2年生前後。

(2015年3月16日)