窓ぎわのトットちゃん

『窓ぎわのトットちゃん』

1981年作品
黒柳徹子著
講談社 青い鳥文庫

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黒柳徹子の自伝的小説。第2次世界大戦前、トットちゃんは、学校で他の生徒と違ってあまりおとなしくしていられませんでした。たちまち学校を追い出されたトットちゃんは、東京都のトモエ学園に入学します。そこにはトットちゃんのような境遇の子どもたちがいました。トモエ学園の校長である小林先生はトットちゃんに、「君は、ほんとうは、いい子なんだよ。」と語りかけます。トットちゃんは小林先生の愛情に触れながら、自由なトモエ学園で毎日楽しく勉強し、生活をしていきます。そして、トットちゃん、つまり黒柳徹子は立派に成長していきます。また、トモエ学園の同窓生達は揃いも揃って日本を代表するような人物になりました。教育とは、学校とはどうあるべきなのだろうかと考えさせられる内容です。

『窓ぎわのトットちゃん』は戦前の話ですが、日本の状況は大きく改善したと言えるのでしょうか? 今、学校では、他の児童と少しでも変わった子がいると発達障害だとか学習障害だとか恐ろしい名前をつけて特別な対応をしがちです。しかし、その子どもたちはそんな恐ろしく深刻な名前をもつ病気にかかっているのでしょうか? トモエ学園の小林先生は子どもをあるがままに受け入れ、「君は、ほんとうは、いい子なんだよ。」と言います。これだけで子どもがどんなに救われることでしょうか。トットちゃんが自分を肯定できるようにした小林先生。その出会いがトットちゃんを成長させるのです。今、大人たちは子どもを否定し、成長の目を摘んでいないか真剣に考えるべきです。

講談社 青い鳥文庫の本は356ページもありますが、自由なトモエ学園の描写が面白いうえ、すべての漢字に読み仮名が振ってあるので、読書力があれば小学3年生から読めるでしょう。また、子どもにこの本を薦める場合は、ぜひお母さんも読んでみてください。大人にも大きな感銘を与えるに違いありません。

(2015年3月11日)