『じっぽ まいごのかっぱはくいしんぼう』
1994年作品
たつみや章著
あかね書房
ある日、小学3年生の少年は台風で流されてきたかっぱの子どもを発見します。彼はそのかっぱに「じっぽ」と名前をつけてこっそり飼うことにしました。でも、どうやって? かっぱは何を食べるのでしょうか? 親にはばれないのでしょうか? そもそも家で飼っておけるのでしょうか? きっと簡単ではないような気がしますね。
「きゅるるる」と愛くるしい声を発するじっぽは少年に可愛がられますが、その存在をほかの人に知られると、少年がいない間に大学に連れて行かれてしまいます。大学では研究のために解剖され、標本にされるのだとか。これは一大事です。少年はじっぽを救出します。ところが、救出に成功したものの、じっぽは死にそうになります。かっぱは人間と同じ環境では生きられないのです。少年はじっぽを飼うことを諦め、水がきれいな生まれ故郷に帰すことにするのです。
動物を飼うのは決して簡単ではありません。子どもにとっては金魚を飼うのだって大変です。どんな生きものであれ、ゲーム機の中にいるのではなく、現実の世界で生きているのですから、飼うとなればその命に責任を持たねばなりません。ましてや少年が飼おうとしたのは世にも珍しいかっぱです。身体も大きく、えさの魚も大量に食べます。そして、心があるのです。飼うのは決して生やさしいことではないのです。『じっぽ』は生きものを飼うことはどんなことなのかを考えさせてくれます。
対象学年は小学3年生前後です。
(2015年3月5日)