鷲田清一 『ちぐはぐな身体 ファッションって何?』

鷲田清一の『ちぐはぐな身体 ファッションって何?』(ちくま文庫)を読む。

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鷲田は「身体は<像(イメージ)>」であると最初に言い切る。人間は自分の顔を自分で直に見ることはできない。背中や後頭部も、下半身の局部もそうだ。自分で知覚できる部分は思っているほど多くない。だから、鷲田はこう続ける。

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ぼくの身体でぼくがじかに見たり触れたりして確認できるのは、つねにその断片でしかないとすると、このぼくの身体って離れてみればこんなふうに見えるんだろうな・・・・・という想像の中でしか、ぼくの身体はその全体像を表さないと言っていいはずだ。つまり、ぼくの身体とはぼくが想像するもの、つまり<像(イメージ)>でしかありえないことになる。

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鷲田はファッションについて書き始めた頃、恩師から「世も末だ」と呆れられたという。確かに哲学者がファッションについて研究し、語るというのは我々が考える哲学者の仕事とは違うように最初は感じられる。しかし、どうだろう、「身体は<像(イメージ)>である」ということから説き始める鷲田のファッション論は刺激に満ちた哲学ではないか。鷲田の名著『モードの迷宮』が出版されたのは1989年だったが、大評判になったのは当然だ。鷲田の恩師は鷲田の真価を理解していなかったのだ。

(2015年8月4日)