ホーマー・ヒッカム・ジュニア 『ロケット・ボーイズ 上・下』

ホーマー・ヒッカム・ジュニアの『ロケット・ボーイズ 上・下』(草思社)を読む。

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作者の自伝的小説である。映画「October Sky 邦題 遠い空の向こうに」の原作である。映画は渋い名作だったが、原作に到底及んでいない。

1957年、ソ連が人工衛星スプートニクを打ち上げた。これは当時のアメリカ人に強烈な精神的打撃を与えたらしい。その中で、自分もロケットを打ち上げたいと一念発起した高校生がいた。それがこの作品の主人公ホーマー・ヒッカム・ジュニアである。彼は高校3年間をロケットの作成に明け暮れる。仲間もできる。支援してくれる先生、大人が現れる。主人公はロケットの設計のために数学も物理も化学も熱心に勉強する。そして、科学フェアの全国大会で優勝する。しかし、好きな女の子は自分に気がない。彼の父は兄を偏愛し、自分に好意を持ってくれない。どうすればいいのか。・・・という物語である。

これは翻訳書だが、文章が素晴らしい。日本の作家ならさぞかし感動的に描くと思われるエピソードがさらっと書かれている。例えば、主人公たちは科学フェアでは勝ち進んでいくが、勝利の瞬間は数行で終わる。実に淡々としたドライな文章だ。それだけに、読者は行間を読むことができるわけで、上下巻を読み通した時には大いに充実感を味わった。

ロケットを打ち上げる物語は作家の挑戦意欲を駆り立てるらしい。日本では池井戸潤の『下町ロケット』(傑作)や川端裕人の『夏のロケット』のような作品が生まれている。日本からもフィクションではなく、ノン・フィクションとしてこうした本が出てくることを期待したい。

(2015年10月1日)