石角友愛の『ハーバード式脱暗記型思考術』(新潮文庫)を読む。
原題は『私が「白熱教室」で学んだこと』だったらしい。著者はアメリカの高校・大学を卒業し、ハーバード・ビジネス・スクールを卒業した後、グーグルで働く才媛だ。彼女の目から見たアメリカのエリート教育の実態が分かりやすく述べられている。
この本を読むと、アメリカの高校・大学での教育と日本のそれは目指す方向が違いすぎて、もはや相手にもなっていないと思わせられる。アメリカでは日本のように知識偏重の教育を行わず、物事の本質に迫るべく討議を重ねることが縷々述べられている。また、この本を読む限り、アメリカで教育を受ければ、人間的にも大きく成長できそうだ。こうなると日本教育はアメリカに完敗ということになる。そして、著者は日本人の考えている「勉強」が世界標準の「勉強」とは大きくかけ離れていると主張する。
実際にアメリカで教育を受けてきた人の文章なので、その点では確かに説得力はある。しかし、仮にもハーバード・ビジネス・スクールを卒業した方の著書がこの程度の感想文で良いのだろうか。もう少し日米の教育についてケース・スタディをしても良かったのではないだろうか。また、アメリカの教育方法が「世界標準」だと断言する根拠が不明だ。本当にそうなのだろうか。著者はこうしたことを検討する必要もないと判断したのだろう。しかし、私はその比較研究の結果を知りたいのだ。たとえ結論が同じになったとしても、その検討・研究は無駄ではないはずだ。
(2015年8月5日)