村上龍 『希望の国のエクソダス』

村上龍の『希望の国のエクソダス』(文春文庫)を読む。

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単行本初版は2000年である。執筆時から言えばこの作品は近未来小説だ。

2002年、日本中の中学生たちが反乱を起こす。中学校は中学生たちによって見捨てられるのである。彼らの事実上のリーダーは同じ中学生のポンちゃんである。ポンちゃんは中学生とは思えないほど突き抜けたものの考え方ができる少年だ。彼は中学生80万人のネットワークを使ってビジネスを始める。やがて、日本が通貨危機に見舞われた時、ポンちゃんはインターネット経由で国会演説を行う。それによって日本は通貨危機を凌ぐ。その後、巨大なビジネスグループの総帥となったポンちゃんは北海道に独立国を作り始める。これが大まかな物語だ。

内容的には非常に興味深い。閉塞感漂う日本社会の中で、中学生のポンちゃんが台頭してくる様は痛快である。村上龍はこの作品を書くために膨大な資料を読み、近未来を描くのに使ったが、驚くべきことに、村上龍が描いた近未来である2000年代の様子は、2015年の現在を表現しているかのような真実味がある。そうした点は村上龍の面目躍如である。

しかし、読後感は全く良くない。村上龍は日本が嫌いで仕方ないのだろう。彼は日本を愚劣な人間が巣食う最低の国だとでも思っているのではないか。あるいは、村上龍はすべての日本人が無能で馬鹿に見えるのかもしれない。その気持ちが文章から滲み出ているので、正直申しあげてこの作品を読むのにはうんざりした。それは事実を突きつけられたことに対する私の拒否感や嫌悪があったためなのだろうが、自分が生きる国に対して村上龍がここまで愛がないのは不思議だ。

(2015年10月10日)