山口理 『河を歩いた夏』

山口理の『河を歩いた夏』(あすなろ書房)を読む。児童書である。

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千葉県我孫子市に住む少年一平は、小5の時に大学生の叔父と我孫子から利根川の土手を歩いて太平洋に出た。それがひどく辛い経験だったので、彼はもう2度とそんな馬鹿げたことはしないと決心していた。しかし、小6の夏休みに彼はあることを思い立つ。今度は利根川を逆方向に歩き、新潟県にある利根川の水源まで辿り着こうというのだ。我孫子から水源までは300キロある。しかも途中からは山登りだ。山岳部員でもある大学生の叔父はまたもそれに付き合うが、一平のクラスメイトも男女も参加することになる。

私は自分の体験もあるのでこの本を特に楽しく読むことができた。

私は数年前に自転車に乗ってさいたまから新潟県の苗場スキー場に行ったことがある。前橋までは平坦で、自転車で苦もなく行ける。しかし、その後はなかなか厳しかった。月夜野からはずっと上り坂だ。自転車をのんびり漕いでいるわけにはいかない。早く登り切らないと日が暮れてしまうからだ。私は必死に自転車を漕いだ。

さいたまから苗場まではわずか170キロほどだったが、『河を歩いた夏』で少年たちは300キロを踏破している。大人が1人付いているとはいえ子供ばかりだ。小6では体力的にも非常な負担だろう。また、川沿いを歩くというのは、上流に行けば行くほど道が悪くなるので簡単ではない。道が分からなくなることもある。彼らにとっては大変な冒険だったろう。

苦労しながらも彼らの旅は成功するが、そのコースは魅力的だ。大水上山の水源には大きな石があり、さらに最初の一滴がその少し先の雪渓から発しているのだという。私も利根川の水源まで歩いて行ってみたくなった。

(2015年9月14日)