恩田陸の『蒲公英草子 常野物語』と『エンド・ゲーム 常野物語』(集英社文庫)を読む。
『光の帝国 常野物語』を読んで感動した私は貪るようにして「常野物語」第2作『蒲公英(たんぽぽ)草子』と第3作『エンド・ゲーム』を手にしたわけだが、第1作ほどの感動は得られなかった。
『蒲公英草子』では日清戦争後、日露戦争前の旧家を舞台にしている。その旧家には余命幾ばくもない美しく若い女性がいるが、彼女は常野一族の血が流れているために、未来に起こることを予知できるという特殊能力があった。その少女を巡るはかなく、美しい物語が『蒲公英草子』だ。古い時代の雰囲気を違和感なく表現している点は悪くはない。
しかし、『エンド・ゲーム』の方は、物語が意味不明だ。この作品に登場する家族は敵を「裏返す」ことができる。逆に、敵は自分を「裏返」そうと攻撃を仕掛けてくる。問題は、その敵が一体何で、「裏返す」とはどのようなことなのか最後まで理解できないことだ。「常野物語」はこの後も続くらしい。だから完全な謎解きは続編を読んでのお楽しみということなのだろう。しかし、ここまで説明不足では、続編に期待できない。第4作以降がこの「裏返す」力を持つ家族の話になるのであれば、「常野物語」は読む気がしない。人の記憶を自分のものとして「しまう」ことのできる一族の物語が続くことを期待しよう。
(2015年12月3日)