筒井康隆の『七瀬ふたたび』(新潮文庫)を読む。
前作『家族八景』と第3作目の『エディプスの恋人』を併せて「七瀬三部作」と通称するらしい。
主人公が得心術を使える美貌の女性七瀬であることは変わらないが、前作と異なり本作品には七瀬の他に数人の超能力者が登場する。超能力者は常人にはない特殊能力を持つのだが、そのような特殊能力を持った人間が社会で歓迎されるはずがない。恐怖と憎悪の対象となるからだ。だから、彼らは社会の中では目立たないようにひっそりと暮らす。しかし、彼らには危機が迫る。謎の組織が彼らの抹殺を図っているのだ。そして、謎の組織は情け容赦なく超能力者たちを殺処分していく。物語は主人公の七瀬の死で終わっている。
超能力者たちが無残に虐殺されるこの物語の読後感は極めて微妙だ。陰鬱である。また虚構と分かっていても切迫感ある恐怖を感じさせる。それだけ考え抜かれた作品であり、筒井康隆の筆致は冴えている。
しかし、「七瀬三部作」の最高峰はこの作品ではないのだ。
(2015年7月30日)