よしもとばななの『海のふた』(中公文庫)を読む。
死は出てくるが特別な男女関係は出てこない。ある女性がかき氷屋を開く。お金を儲けるためというより好きでやっている。メニューも独特。しかし、彼女はそれでやっていく。彼女と暮らす少女はネット上でぬいぐるみ屋を始める。
自分で仕事を始める時っていうのは、こうして自分がやりたいことを自分の好きなようにやっていかなければ嘘だ。どこかで現実と妥協しなければならないというのが実情としてあるのかもしれないが、せめて物語として読む時にはそう思いたい。よしもと作品の中でこれほど読後感がよかった作品はなかった。
(2015年7月23日)